フライドポテトや、マーガリンなどに含まれる「トランス脂肪酸」。
心筋梗塞のリスクを高めるとして、ニューヨーク市が締め出しを決めた。


 ニューヨーク市にある飲食店の大半が今、原材料の見直しを迫られている。というのもニューヨーク市保健委員会が12月5日、2008年7月以降は「トランス脂肪酸」の含有量を1食あたり0.5グラム以下にしなければ罰する、と決めたからだ。これは実質的にトランス脂肪酸の禁止だ。
 トランス脂肪酸は、油脂の構成成分である脂肪酸の一種。主に植物油を加工して作るマーガリンやショートニング、そういった脂肪で作ったフライドポテトやフライドチキン、ドーナツ、パン、クッキーなどにも多く含まれる。

デンマークでも制限

植物油を加工してマーガリンなどを作る過程で、液体を固体化したり、賞味期限を長くしたりするために水素を添加する。その際、二重結合している炭素に2個の水素が対角線上につく「トランス型」の脂肪酸が生じる。牛の腸内で作られるので牛肉や牛乳の中に天然で存在するが、大半は油脂の加工過程でできたもの。今回、ニューヨーク市が規制するのは人工トランス脂肪酸だけだ。
 トランス脂肪酸が健康に悪影響を及ぼす、という指摘は10年ほど前から出始めた。米国で約8万人を対象に行われた調査では、1日の摂取カロリーに占めるトランス脂肪酸の割合が2.8パーセントの人は1.3パーセントの人より心筋梗塞の発症リスクが1.3倍ほど高かった。九州大農学研究院の今泉克己教授(栄養科学)はそのメカニズムを次のように説明する。
「トランス脂肪酸は、血中の悪玉コレステロールや、やはり動脈硬化と相関関係のあるリポたんぱくの一種を増やし、次に善玉コレステロールを減らしてしまうため、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まると考えられています」
 デンマーク政府は2004年から、すべての食品のトランス脂肪酸の含有量を2%までに制限している。アメリカやカナダ政府は、加工食品のトランス脂肪酸含有量の表示を義務付けている。
 米国内のファーストフード店ではすでに対策が進みつつある。ハンバーガーチェーン大手のウェンディーズは8月、トランス脂肪酸の含まれない脂肪に切り替えた。ケンタッキー・フライド・チキンは来年4月までに北米の5500店舗で使用をやめるという。

どんな油ならいいの?

世界保健機関と国連食糧農業機関の合同専門家会合では、トランス脂肪酸の摂取量を1日の総カロリーの1%未満にするように勧告している。1日2000キロカロリー摂取の場合、トランス脂肪酸によるカロリー摂取の場合、トランス脂肪酸によるカロリーが1%になる量は、マーガリンで約35グラム、フライドポテトなら約45グラムで超えてしまう。
 日本では今のところ規制はない。1999年の調査では、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は1日平均1.56グラム(総カロリーの0.7%)で、アメリカの3分の1以下だった。
「日本人は摂取量が少ないので、影響は少ないと考えられる」
 と、内閣府食品安全委員会はいう。ただし、食品のトランス脂肪酸含有量などを調査中で、結果によっては見直しもあり得るという。
 適量をとるとして、どんな油脂なた健康への害が少ないのだろうか。大阪大医学系研究科の磯博康教授(公衆衛生学)は言う。
「魚油に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタ酸(EPA)はいわゆる『血液サラサラ』効果があるとされ、魚を毎日食べると心臓病の発症リスクが下がる、という疫学調査もあるとされます。オレイン酸は、善玉コレステロールを増やします」
 エゴマ油やアマニ油はα-リノレン酸を多く含む。熱に弱いのでドレッシングなどに使うといい。加熱するなら、オレイン三が多くて熱に強いオリーブオイルの方が好ましいようだ。
(『AERA』2006年12月18日号より抜粋)

12月5日にJ-WAVE「JAM THE WORLD」に国立健康・栄養研究所・基礎栄養プログラムリーダー・江崎治さんがトランス脂肪酸について話されていました。
 トランス脂肪酸はケーキ、ドーナツなら1個だと1日の安全な摂取量を超えてしまう。スナック菓子などを出来るだけ食べない。日本の心臓病、不整脈の人の1割はトランス脂肪酸が原因をされるとされている。確か40万人くらいだったと思います。
 食品安全委員会は日本人はあまり油ものを食べないので気にしなくてもいいだろうという軽い見方ですが、日本人にも洋食中心の食生活をしている人もいるので、トランス脂肪酸と全く無関係でないとおっしゃられていました。心臓病を防ぐためならトランス脂肪酸を規制する費用は安い。
 アメリカでマクドナルドはトランス脂肪酸を含まない油のメニューを出していると発表していたが、実際はトランス脂肪酸が含まれた油を使い、9億円の罰金を政府から課された。

 メタボリックだなんだと宣伝する前に政府は明確な疾病原因であるトランス脂肪酸を何とかするべきではないか。食品安全委員会の委員の方々は日本人が肉食中心の油を使った食生活に変わってきているということをご存知なのでしょうか。食品の安全に関しては事前規制でなければ危険要因を除去できません。トランス脂肪酸の占める割合を抑えた油を日本でも売って欲しいです。


日本でもトランス脂肪酸フリーの油が輸入されているようです。
トランス脂肪酸フリー