国民の6割が肥満または肥満気味というアメリカでは高カロリーの生活を見直して野菜中心の食生活に切り替えようとする人たちが少しずつですが出てきています。無農薬野菜や無添加食物などの食の安全の関心も高まっています。
Whole Foods Marketは全米に184店舗を展開しているオーガニック食品中心のスーパーです。経営者はジョン・マッキー。大学を6回ドロップアウトしている異色の持ち主です。

Whole Foods Market(http://www.wholefoodsmarket.com/)

JohnMackey








John Mackeyhttp://www.wholefoodsmarket.com/blogs/jm/


リポーター(以下Rと省略):ヒッピーでしたか?

ジョン・マッキー:まさか。普通でしたよ。

R:そうですかね。社会主義者で髪も伸ばしていたんでしょう。共同生活も送っていた。

ジョン・マッキー:ええ。

R:一般的には普通とは呼ばないですよ。

ジョン・マッキー:周りの仲間がみんなやっていたんです。

こんな風に企業家として成功するなんて思いましたか。

ジョン・マッキー:いいえ全く。


52歳のジョン・マッキー氏は今アメリカのビジネス界でめきめきと頭角を現しています。典型的な大企業のトップとはちょっと違います。
スーパーマーケットチェーン、ホール・フーズマーケットはマッキー視の型破りな手法により90億ドルのビジネスに成長しました。この5年間でホール・フーズの株は急上昇。この勢いは大手企業のebayやyahoo、マイクロソフトを上回ります。マッキー氏は類を見ないスーパーを作り上げたのです。

ジョン・マッキー:買い物はたいていの人にとっては面倒くさいものです。だから、買い物をもっと楽しく、魅力あるしたいんです。アメリカの食生活はマンネリ化しています。

ホールフーズではシェフが店頭でブロッコリーをソテーを作ったり、スシバーで食事をするお客さんもいます。チーズの種類も600種類。ワインは1800種類あります。イートインコーナーは6つあります。ピーナッツバターはセルフ方式でお好みのピーナッツが選べます。チョコレートコーナーでは好きなだけトッピングができます。お店の一貫したテーマは体に良いもの。人工の保存料や着色料、甘味料を使った食品は一斉ありません。とはいえ、ビールやアイスクリームが売られているのも事実。

R:全部が全部体に良いとはいえないですよね。

ジョン・マッキー:極端に走るつもりはありません。基準は設けていますがあとはお客さんが決めることです。

マッキー氏の方針はこれまでを覆すものばかり。動物たちが工場の中で一生を終えることにショックを受けた彼は動物愛護基準なるものを導入。値段は少し高めですが、屋外の広大な牧場で大切に育てられた牛の肉やロブスターを買うことができます。

R:ロブスターも最後は茹でられてしまうんですよね。

ジョン・マッキー:最後は死ぬからといって生きているうちの生活の質は関係ないと言えますか。質の高い生活、クオリティ・オブ・ライフこそ全てなんです。ロブスターでも同じでしょう。

R:動物愛護基準についてはやり過ぎだという話もあります。

ジョン・マッキー:当然です。私はただ私のやり方でやりたいだけです。

ほかにも斬新なアイデアを出し、ビジネスを拡大。例えば、新人採用も従業員の投票で決めたり、従業員の給与額を公開したりと。

ジョン・マッキー:店舗に行くとスタッフがこれしていいか、あれを仕入れていいかいちいち私に聞いて来るんです。自分たちのことは自分たちで考えようと考えたんです。

従業員重視というホール・フーズですが、労働組合はありません。そのかわり従業員たちの給与は業界でもトップレベルで、そのうち9割が福利厚生が完備されています。幹部クラスには給料の上限が定められており、マッキー氏の去年の年収は43万ドルでした。社会貢献活動にも熱心です。地元の慈善団体に店の利益の5パーセントを寄付していると言います。最近では全店舗の電気を風力発電でまかなう計画を発表しました。(Whole Foods goes with the wind)

R:利益を社会奉仕につぎ込め、株主に還元する。矛盾しているのでは。

ジョン・マッキー:とんでもない。利益を上げ、店舗を増やし、地域に寄付して環境に配慮する。全てはつながっていてお互いに機能しているんです。切り離しては考えられません。

R:金儲けをしただけじゃないかと言う人もいます。

ジョン・マッキー:その言葉をそのまま返しますよ。一面だけを見て私の何がわかるんですか。


テキサス州、ヒューストンの保守的な環境で育ったマッキー氏は幼い頃から自分を貫いていたそうです。高校時代バスケットの試合に出させてもらえなくなると出場できる別の高校に転校したといいます。

ジョン・マッキー:家族全員で引っ越したんです。転校するために。学区を移った。シーズン後は元に戻りましたけれどね。

両親の望みに反し大学を中退したマッキー青年は当時のガールフレンドと一緒にSafer-Wayという健康食品店をオープン。ライバル店と合併しようともくろんだ彼は俺たちと組まなければこの業界を追い出すぞと言った。

ジョン・マッキー:半分は本当。友人が経営している店で。

こうして1980年にホール・フーズ・マーケットが誕生。以来25年に渡って小さな健康食品店を買収しながら少しずつ規模を広げていきました。人々の関心は地元の農家の有機栽培の食品へ。この傾向をうまく利用しながらビジネスチャンスをつかんでいったのです。しかし、理想も高いとそれだけ値段も高め。全般的に値段は高め。有機野菜の場合、栽培するのにコストがかかるからとマッキー氏は言います。

R:買えるのは金持ちだけという声もありますが。

ジョン・マッキー:何をとるのかということだと思います。ちょっと値は張りますが、味も良いし品質も良い。体にも環境にも良いものが手に入るんですから。こうした試みで都市部でも郊外でも人々の心をつかんだホール・フーズ。全米に約200店舗を持ち、ヨーロッパへの進出を控えた今、従来のやり方を変える時期に来ていると言います。

ホールフーズの契約農家は規模は様々です。

小規模な農場から工業化された巨大農場もあるんです。カリフォルニア州アースバンド農場。面積3000万坪、1時間に8000キロちかくのレタスを収穫します。殺虫剤や化学肥料は一切使用されていません。ホールフーズはいまや各地に流通センターを持っています。スーパー店内にはパン工場や水産加工場、コーヒーショップも併設。バイヤーが世界各国を飛び回っています。さらに取引している自然食品会社はクラフトやコカ・コーラの関連会社の子会社などです。

R:商業主義に走りすぎているという批判もあります。

ジョン・マッキー:その批判は1982年の第2号店を立ち上げたときにも聞きました。アメリカには中小企業に対する幻想と大企業への誤解が存在する。わが社はそれを打ち破ってみせるつもりです。企業は拡大しても変わらない中小企業が持っている思いやりと責任感をもっているとね。



ピーター・バラカンさん:オレゴンに行ったときに、ホール・フーズがあって新鮮な野菜や果物が山になってあって驚いたんです。その奥に新鮮な魚があった。ここはアメリカなのというくらい。お惣菜がおいしそうでした。

吉本さん:良いものを供給したいということに好感を持てました。これほど成功しているのにCEOとしての給与が43万ドル。1けた、2けた低いかもしてれない。

ピーター・バラカンさん:組合をつくるというのは従業員を搾取しようとしてるから、つくるものですよね。組合がないのは従業員が必要がないと認めているということですね。スターバックスも同じような企業ですけれども。

吉本さん:オーガニック食品はアメリカでは非常に厳しい基準があって、クリアしないとオーガニック食品として認定してもらえない。オーガニック食品の売り上げは伸びていて、去年の売り上げが146億ドル。17パーセント伸びている。ここに目をつけたのが巨大なスーパーのウォールマート。顧客にお金持ちが多くはない。割高なので高所得者層を狙っている。ホールフーズなどのオーガニック専門スーパーよりも2割安く売ると言っている。

ピーター・バラカンさん:最も従業員を搾取しているスーパーですから。

吉本さん:オーガニック食品マーケットが増えてくるとオーガニック食品がアメリカでは生産が追いつかなくなり、中国などの海外の食品に頼らなくてはいけなくなってくる。その時厳しい基準をクリアできるようなオーガニック食品を果たし作れるのでしょうか心配になります。
(2006年TBSテレビ「CBSドキュメント」「巨大オーガニック・スーパー・マーケット・チェーン」Whole Foods Marketより)