毎日新聞 2013年03月27日 22時00分(最終更新 03月27日 22時08分)

 東京都江戸川区の都立大島小松川公園近くの排水溝の水に、高濃度の有害物質「六価クロム」が含まれていることが、渡辺泉・東京農工大准教授(環境毒性学)のチームの調査で分かった。環境基準の約3000倍という。都環境局は27日、現地に職員を派遣して調査を始めた。

 一帯は、1973年に都が購入した工場跡地で、高濃度の六価クロムを含む鉱物のくず「鉱滓(こうさい)」が大量投棄された。都などは鉱滓を無害化した上で鉄板などで仕切って地中に埋めた。

 ところが、周辺では11年2月と昨年4月にも、六価クロムを含む地下水の漏出が発覚。処理のため除去した土壌から環境基準の約220倍の六価クロムが検出された。当時、都は漏出を確認しながら「健康に影響はない」という理由で、区や住民に連絡していなかったことが問題化した。

 チームは「無害化処理されない鉱滓が地中に存在し、環境を汚染し続けている可能性がある」として、今年1〜3月、同公園周辺で、格子状の金属のふたがされた排水溝から水を採取。最高で、環境基準(水1リットル当たり0.05ミリグラム)の約3000倍に当たる153ミリグラム(153ppm)の六価クロムを検出したという。尾崎宏和・特任助教は「都は住民にも情報を公開し、原因の究明を急ぐべきだ」と指摘する。

 都環境局の成沢智司・土壌地下水汚染対策担当課長は「飲用水ではないので直ちに影響はないが、3000倍が本当ならば放置できない。汚染源を特定する必要もあり、調査結果を見て対応を検討したい」と話している。【阿部周一、柳澤一男】

 【ことば】六価クロム

 メッキや顔料、皮なめしなどに用いられ、関連工場などから排出されることがある。毒性は強く、皮膚炎や潰瘍、肺がんなどを起こす恐れがある。環境省は、有害な重金属を対象とする「第2種特定有害物質」に指定し、土壌や地下水の環境基準を設けている。


http://mainichi.jp/select/news/20130328k0000m040119000c.html