2016年11月15日 16時30分

 トランプ次期米大統領が選ばれた11月8日の選挙日、フロリダ州のモンロー郡でもう一つの重要な投票が行われた。ジカ熱などの感染症をなくすために、遺伝子を組み換えた蚊を野生に放つ実験の是非を問う住民投票だ。

 英国のバイオ企業オキシテックが開発した技術。雄の遺伝子組み換え蚊が自然の雌と交配すると、生まれた蚊は成虫になる前に死ぬようにプログラムされている。この方法で感染症を媒介するネッタイシマカなどを根絶するアイデアだ。同社はブラジルなどで試験を5回行い、蚊を90%以上減らすことができたという。ただ科学、技術、医学の3学会でつくる全米アカデミーズは「標的以外の生物種の壊滅や別の強力な生物の台頭など予期しない影響を招く恐れがある」と警告していた。

 投票結果は58%対42%で容認派が勝利。同州では今夏、地元の蚊が媒介したとみられるジカ熱感染例が数十件報告されているので無理もない選択かもしれない。とはいえ、生態系を変えてしまうような実験を住民投票で決めていいのか。素朴に疑問を感じる。 (井手)


=2016/11/15付 西日本新聞夕刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world_telescope/article/289233