東京電力福島第1原発事故で生じた放射性物質を含む農林業系廃棄物を巡り、岩手県内で最も発生量が多い一関市で、国の基準(1キログラム当たり8000ベクレル)以下の汚染牧草と一般ごみを一緒に焼却する混焼が進んでいる。処理量は約6割に上り、焼却方針の是非で迷走する宮城県の状況とは対照的に映るが、高濃度の他の廃棄物処理が停滞している事情は一緒。処理場周辺の住民、廃棄物の長期保管を強いられる農家の不安も変わらない。(一関支局・浅井哲朗)

 一関市と岩手県平泉町のごみ処理を担う一関市大東町の大東清掃センター。セシウムを含む牧草が1日最大5トン、混焼されている。推計総量6538トンのうち、昨年11月末までに約6割の3883トンが焼かれ、灰は一関市東山清掃センターに最終処分されている。
 2市町でつくる広域行政組合によると、牧草のセシウム濃度は1キログラム当たり平均1786ベクレル。これまで数回、基準超えの牧草が見つかり保管場所に戻した。

<18年度完了予定>
 今年から、牧草が腐らないよう固形化したペレットを焼却。昨秋、環境省の補助金6000万円を使い、焼却炉の燃焼機能を強化した。計画通り2018年度の全量処理を予定する。
 組合幹部は「(濃度が高くなる)焼却灰も国の基準よりさらに厳しい5600ベクレル以下に抑えている。排ガスのセシウムは不検出だ」と語る。混焼開始時を振り返り「腐りやすい牧草の早期処理に地元の理解が得られた」と説明する。
 ただ、昨年5月には12〜13年に基準値超えのセシウムを含む牧草を処理した事実が判明し、混焼が約1カ月ストップする事態となった。放射性物質の検査体制や市民との情報共有の在り方が問われた。
 混焼中止を求める住民組織代表の男性は「煙突からのセシウム漏れを指摘する専門家もいて、危険性を100パーセント否定できない。一関の事例を宮城の安心材料にすべきではない」と強調する。
 セシウム濃度が高い稲わらや堆肥、量の多いほだ木などが手つかずの状況は宮城と同様だ。指定廃棄物を含む一括処理を見据えた環境省の仮設焼却施設計画を巡り、一関市が建設候補地とした狐禅寺地区の住民が反発。議論が凍結に追い込まれているためだ。

<保管テント80棟>
 市が設けた仮設テントで、震災から3年の期限付きで稲わらの一時保管を受け入れた農業男性は「震災から5年半以上たっても状況は何も変わらない。行政の言う期限は当てにならない」と不満を抱く。こうしたテントは市内に約80棟。老朽化を危ぶむ声もある。
 勝部修市長は環境省との議論再開を示唆するが、見通しは不透明だ。市は昨年12月、汚染ほだ木をチップ化し通常のチップと混ぜて産業用に活用できるかどうかの実証事業を開始。「焼かない処理」の検討も本格化させている。

[一関市の放射性物質に汚染された農林業系廃棄物]約2万6000トンで岩手県全体の発生量(5万9000トン)の約4割を占める。このうち、ほだ木が約1万4000トン。基準超の稲わらなどが県内分のほぼ全量に当たる640トン発生したため、仮設焼却施設の建設場所となった。県によると、農林業系廃棄物は24市町が保管。混焼中の15市町のうち8市町で終了した。


2017年01月10日火曜日
河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201701/20170110_33002.html