2017年01月29日

◆ほだ木安定確保に懸念も

 東日本大震災後の東京電力福島第一原発事故の影響で、県内でも出荷制限が続く露地栽培の原木シイタケの生産者数が回復の兆しを見せている。県内の一部で出荷制限が初めて解除された2014年8月以降、これまでに28生産者が出荷を再開した。ただ、生産者は国の補助などを受けて原発事故の影響がない県外から原木を仕入れており、安定して生産を継続できるか不安がる声も出ている。

 国は原発事故直後、食品の放射性セシウムの規制値を1キロ・グラムあたり500ベクレルとしたが、12年4月に同100ベクレルに厳格化した。これを受け、県内でも規制値を超す原木シイタケが相次いで見つかり、21市町村が出荷制限の対象となった。このため県内の原木シイタケ生産者は減少し、林野庁の統計では、規制値が厳しくなる前の11年に209だった生産者数は、変更後の13年には51に激減した。

 その後、生産を再開し、出荷制限の解除にこぎ着ける生産者も出てきている。出荷制限の解除は、管理基準をクリアした生産者が個別に申請しており、14年8月に登米市内の2生産者が解除されたのを手始めに、15年は15生産者、16年は10生産者、今年に入り新たに1生産者が出荷を再開した。

 大和町の宮沢光夫さん(66)は、造園業を営む傍ら、地元で調達したナラを使って原木シイタケを育ててきた。おがくずなどを固めた床を使う菌床栽培の生産者も多いが、宮沢さんは「原木シイタケの方が歯ごたえもあっておいしい」とほだ木での露地栽培を続けてきた。震災前は約1000本のほだ木を所有していたが、原発事故の影響で全て廃棄した。

◆岩手から仕入れ

 宮沢さんは、原発事故後は放射性物質への懸念から地元で原木を調達できなくなり、13年春に岩手県から500本を仕入れて生産を再開。放射性物質の影響を排除するため、ほだ木が地面に触れないよう、地面を麻袋で覆うなどの対策を施し、県の検査を受けて15年2月に出荷制限の解除が認められた。これまでに震災前を上回る約3000本のほだ木を調達した。

 しかし周囲では、まだ出荷制限の解除のめどがたたない生産者もいる。また出荷制限が強まったのを機に廃業してしまったケースも少なくない。宮沢さんは「直売所やスーパーに安定してシイタケを供給するために、うちの生産量を増やさなければ」と話す。

◆安全性PRへ

 ただ、県林業振興課によると、生産者によっては出荷制限が解除されても、取引先が他の産地からシイタケを入荷するようになっているケースもある。県は、2月に原木シイタケの生産再開までの過程を紹介するパネル展や販売会を県庁で開催し、消費者に安全性をPRするが、販路の確保は大きな課題だ。

 生産に必要なほだ木の調達への懸念もある。原発事故後、生産者が新たにほだ木を仕入れる場合、東京電力の補償や国の補助で、仕入れ値を事故前の水準に抑えられている。しかし原木シイタケを生産する登米町森林組合の担当者は「今はいいが、補助がいつまで続くかわからない。ほだ木を安定して確保できないと、生産を続ける計画を立てにくい」と不安を口にした。

読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/local/miyagi/news/20170128-OYTNT50224.html